タバコの煙が揺蕩いだす。
「欺瞞情報についてはすでに37パターン発信済みであるぞ」
「メイジとデッカーの両方の能力がある人間が解析して43時間必要するレベルだと自負しておる」
「外交官パスですがサーリッシュについては非常に面倒でして…」
「あの国はある程度デジタルはあるんですが基本アナログです」
「どこそこ族のだれそれが作った彫刻や織物が身分を証明してくれます」
「Aさんが作ったものを持ってると言うことはAさんの友達でAさんの友達なら信用できるだろう」
「そういう身分保障の仕組みでして、外交官クラスなら族長クラスからの送りものが必要です」
「サーリッシュの人間は彫刻や織物を見てそれがどこの工芸品か判別する能力を一般常識レベルで持ち合わせています」
「ロシア公式のデジタルの身分証明は用意しますが問答無用の信用を勝ち取る機能は無いと思ってください」
「口八丁手八丁も皆には期待しているぞ」
見るからにまずそうな緑色のスムージーを一口飲んでからゴスロリエルフは続ける。
「サリバン兄弟はベギニスタンの独裁者クラウド・サリバンの子女です」
「ジーニアスは父親と違い言動がツンデレなだけで国と国民と自由を愛するリベラルな人間です」
「同時に物事の優先順位を付けられる冷静な人間でもあります」
「そういう意味ではジーニアスが今回の召喚に成功して立場をさらに盤石なものにするとまずいと思う連中もいるな」
「クラウドの腰ぎんちゃくをしてうまい汁を吸ってた連中やそいつらと関係の深いロシア本国の連中ですね」
「そっちは重々警戒して先ほどの欺瞞情報をつかませておる」
「ちなみにジーニアスは第三階梯の精霊研究をテーマとするイニシエイトだ」
「ジーニアスは大学のゼミが同じでその時からの付き合いだな」
「で、アナの方だが我と高校の時からの付き合いでな。我が所属してたジャパニ研の会長であった」
「あー、ジャパニメーション研究会です」
「本人は本国の政治には興味はなく禅の修行と日本のアニメを見ることに命を懸けておる」
「ミスティックアデプトとしては呪文、錬金術、儀式、精霊は一通り使えて日本の格闘技もブラックベルトレベルだ」
「イニシエーションはしておらぬがなかなかの腕前だぞ」
そこで少し眉をひそめてからつぶやいた。
「あといい子なんですけど、ちょっと恋愛脳でして定期的にダメンズに引っかかります」
「今回も日本人のアニメ声優と自称するフリーの旅人に恋をしておりまして…」
「男の名はアダマ・シロウ、同人アニメに3回ほど出演していますので自称声優と言うのは失礼かもしれません」
「作品自体の頒布が終了していたので中身は確認できてませんが」
「東京のレンラク系の企業大学卒業後は一度も定職に就かず…失礼、声優活動をつづけながら世界中を旅しているようです」
「収入源は親からの仕送りと現地で出会った彼女からのプレゼントがメインのようです…」
「そいつがヒマラヤの奥地でサスカッチとトラブったとかで我々は救助に向かいます…」