「くそったれ…」
赤いコートの探偵が、見えた。
そこまでは認識できた…
で、停電が起きた
そうしたら、腹に重たい一撃が来た
意識も有る。感覚も有る。
大雨に打たれて尚且、冷えたアスファルトの感触も感じないようじゃ70年前に流行ったウィルスの罹患者だよな…
けど、身体が動かないんじゃどうしようもないよな…
で…誠二よ。その表情は何だよ?
哀れみと後なんだろうな…
あぁ、JOKERがたまに浮かべた表情だ…
最初に見たのは何時だろう…
拾われて間もない頃だ…
家族を失って荒れて、そこを拾ってくれたJOKERとその仲間達ですら敵に見えて襲いかかったんだ…
で、結果は今と一緒
あぁ、情けなくて笑いが出てくる…
(結局…意地の張る方向を間違えてたんだわな…)
「…。よし、俺向きの依頼だな。泥船に乗ったつもりでいていいぞ?で、J、お前は何を聞いているんだ?もっと大事なことがある。これだからいつまでたってもおむつが取れないんだ。因みに糞野郎って言ったのはちゃんと聞こえていたからな」
(好き勝手言いやがる。くそったれ)
「うるせえよ…」
天井できらびやかに輝く、シャンデリアを見つめつつ
耳に入ってくる誠二の交渉に悪態をつきつつ
(つまらない仮面を被るのはやめだ…俺は俺のやり方で行くしかねえか)
「単なる肉の壁をやってやるから、勝ち筋作ってくれよ。全員でできること精一杯やってさ、それでダメだったら、笑ってみんなで逃げようぜ」
腹を抑えながら立ち上がって
「この雨なら、おむつがあってもなくても一緒だろ?頼りにするよ、めい探偵」